ハクビシンは害獣扱いされてかわいそうな生き物か、無害な生物なのかを詳しく解説していきます。
ハクビシンといえば農作物への被害や人への被害などが思いつきますが、実際にはどうなのでしょうか。
ハクビシンとは?その生態と特徴
ハクビシン(白鼻心)は、ジャコウネコ科に属する動物で、日本では古くから見られる外来種です。体長は約90~110センチメートルで、顔の中央に白いラインが特徴です。
ハクビシンは夜行性で、昼間は隠れ家に潜み、夜に活動します。雑食性で、果実、トウモロコシ、小動物、鳥の卵、昆虫などさまざまなものを食べるため、自然環境や農村、都市部でも食料を求めて出没することが増えています。特に果実を好むため、果樹園や農家に被害が及ぶことがあります。これが、農業被害の大きな要因となっています。
ハクビシンが害獣扱いされる理由
ハクビシンはかわいらしい見た目から、無害に見えることがありますが、実際には人間の生活に大きな影響を与えることがあります。次のような理由から、害獣として扱われることが多いです。
- 農業被害
ハクビシンは果実やトウモロコシなどの農作物を好むため、収穫期に畑や果樹園に侵入し、食害を引き起こします。特に果物に対する被害が深刻で、メロンやブドウ、柿など糖度の高い果物が好まれます。 - 家屋への侵入
ハクビシンは木登りが得意で、屋根裏に住み着くことが多く、屋根や壁に侵入経路を作ります。さらに、同じ場所に糞尿をためる習性があり、これが悪臭や衛生問題を引き起こし、家屋の腐食や害虫の発生(ダニ、ウジ虫、ゴキブリなど)を招く原因になります。特に天井板の劣化が進み、修繕が必要になるケースも珍しくありません。 - 病原菌の拡散
ハクビシンはエキノコックス症やSARSウイルスの媒介者となる可能性が指摘されており、病原菌を拡散するリスクがあります。このような衛生上の問題も、害獣として扱われる理由の一つです。
ハクビシンによる具体的な被害
ハクビシンによる被害は、農作物や家屋への直接的なダメージだけでなく、次のような形でも現れます。
- 農業被害
特に果物農家にとっては深刻です。ハクビシンは糖度の高い果物を狙うため、ブドウ、柿、メロン、梨などに大きな被害を与えます。大量に食べ尽くすわけではなく、一部をかじって残すという特性があり、見た目や品質が損なわれ、出荷できなくなるケースもあります。 - 家屋の被害
天井裏や屋根裏に侵入し、糞尿をためることで悪臭が発生し、天井板が腐ったり、シミになったりします。さらに、ハクビシンの糞尿により害虫が発生し、家全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
被害対策の具体的手順
ハクビシンによる被害を最小限に抑えるためには、次のような具体的な対策が有効です。
- 家屋への侵入経路を遮断する
ハクビシンは屋根や壁の隙間を利用して侵入します。建物の外壁や通気口、屋根の隙間をしっかりと塞ぐことが大切です。また、劣化している部分を早めに修繕することで、侵入を防ぐことができます。 - 家の周囲の樹木を剪定する
ハクビシンは木を使って屋根に登るため、家の周りにある樹木を剪定して、屋根に飛び移れないようにするのが効果的です。また、樹木に障害物を設置して、登れなくすることも有効です。 - 餌となるものを放置しない
ハクビシンは特に果物やペットフードに引き寄せられます。庭に果物が落ちていたり、ペットフードが外に放置されていたりすると、ハクビシンを引き寄せる原因になります。これらを適切に管理することが重要です。 - 燻煙殺虫剤を使用して追い払う
家屋内に侵入された場合、燻煙殺虫剤を使用して追い払うことができます。追い出した後は、侵入経路をしっかりと塞ぐことが重要です。 - 捕獲の際は許可を取得する
ハクビシンは野生鳥獣保護法により、許可なしに捕獲することは法律で禁止されています。もし捕獲する必要がある場合は、役場や関連機関に相談し、許可を取得した上で対応します。
ハクビシンは無害か?—誤解と真実
ハクビシンが「かわいそう」だとされる理由には、その見た目や存在感が関係しています。しかし、実際には以下のような面で無害とは言い難いです。
- 衛生リスク
ハクビシンが糞尿を特定の場所に溜めることで、病原菌や害虫が発生するリスクがあります。特に、エキノコックスやSARSのような深刻な病気の媒介者になる可能性が指摘されています。 - 建物への被害
天井裏などに侵入されると、糞尿によって建物の損傷が進み、長期間放置すると修復が難しくなる場合があります。こうした被害は無視できません。
ハクビシンとの共存の可能性
ハクビシンを完全に排除することは現実的ではありませんが、適切な管理と対策を取ることで、共存は可能です。具体的には、以下のポイントに注意が必要です。
- 環境の整備
ハクビシンが住み着きにくい環境を作ることが大切です。餌となるものを放置しない、家屋の隙間を塞ぐなど、住みにくい環境を提供することが共存の第一歩です。 - 法律の順守
ハクビシンを無許可で捕獲することは禁じられています。そのため、被害が大きい場合は、行政に相談し、適切な手続きのもとで対策を講じることが重要です。